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アパレルSDGsと「検品」の深い関係!課題解決とブランド価値向上を実現する方法

アパレル業界では、環境負荷や労働問題といった深刻な課題を背景に、SDGsへの取り組みが急務となっています。しかし、「何から手をつければよいのか分からない」「コストがかかりすぎるのではないか」といった悩みを抱える担当者や経営者の方も多いのではないでしょうか。

実は、日々の業務の中で行われている「検品」というプロセスが、SDGs達成において重要な役割を果たします。検品は単なる品質チェックではなく、環境保全や労働環境改善につながる鍵となる取り組みです。

本記事では、アパレル業界が直面するSDGsの課題を整理しながら、検品を軸とした具体的な解決策を解説します。持続可能なファッション産業の実現に向けた第一歩として、ぜひお役立てください。

アパレル業界でSDGsへの取り組みが急がれる理由

アパレル業界は、深刻な環境負荷を抱える産業の一つです。大量生産・大量消費・大量廃棄というビジネスモデルが長く続いた結果、環境破壊や労働問題が顕在化しました。国連貿易開発会議(UNCTAD)による情報発信や、2019年のG7サミットでの「ファッション協定」発足を契機に、業界全体で本格的な改革が進められています。

消費者の意識も変化しており、サステナブルファッションへの関心は年々高まっています。企業がSDGsに取り組むことは、社会的責任を果たすだけでなく、ブランド価値の向上や新たな顧客層の獲得にもつながります。

参考:国際連合広報センター

アパレル業界が抱える環境負荷の実態

現代のアパレル業界が抱える課題は、以下のように多岐にわたります。

  • 大量廃棄の実態

環境省の最新調査(2024年版マテリアルフロー)によれば、日本国内では年間約82万トンの衣服が供給され、その約7割にあたる56万トンが事業所や家庭から手放されています。最終的に未利用のまま処理される量は51万トンに達し、リサイクルやリユースされる割合は依然として低い状況です。

  • CO2排出の問題

環境省の最新調査(2024年版マテリアルフロー)によれば、日本国内では年間約82万トンの衣服が供給され、その約7割にあたる56万トンが事業所や家庭から手放されています。最終的に未利用のまま処理される量は51万トンに達し、リサイクルやリユースされる割合は依然として低い状況です。

  • CO2排出の問題

環境省のデータによると、1着の衣服を作るために約25.5kgのCO2が排出されます。これは500mlペットボトル約255本を製造する際に発生するCO2量に相当します。製造工程の中でも、原材料の調達、紡績、染色の段階が全体のCO2排出量の約85%を占めています。

  • 水資源の消費

UNCTADによると、ファッション業界は毎年930億立方メートルという、500万人のニーズを満たすのに十分な水を使用し、約50万トンものマイクロファイバーを海洋に投棄しています。炭素排出量は国際航空業界と海運業界を合わせたものより多い量を排出しています。

参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2024年版衣類のマテリアルフロー日本総研 環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務

衣服の生産から廃棄までで排出されるCO2の問題

衣服は、原料の調達から製造、輸送、使用、廃棄に至るまでの全ての段階で二酸化炭素を排出しています。環境省のデータによると、1着の衣服を作るために約25.5kgのCO2が排出されます。これは500mlペットボトル約255本を製造する際に発生するCO2量に相当します。

製造工程の中でも、原材料の調達、紡績、染色の段階が全体のCO2排出量の約85%を占めています。ポリエステルの製造時に排出されるCO2は、綿の約3倍にもなります。また、日本で販売される衣服の約98%は海外からの輸入品であり、長距離輸送によって多くのCO2が排出されています。

CO2排出を削減するためには、環境負荷の少ない素材の選択、製造工程の見直し、適量生産の推進、廃棄物の削減といった総合的な取り組みが不可欠です。

参考:日本総研 環境省 令和2年度 ファッションと環境に関する調査業務経済産業省「繊維製品(衣料品)のLCA調査報告書」(2009年更新版)三菱UFJリサーチ&コンサルティング 2024年版衣類のマテリアルフロー

アパレル業界が抱えるSDGsの課題と「検品」による解決策

アパレル業界には、環境負荷だけでなく、労働問題や品質管理の課題も存在します。ここで注目すべきなのが「検品」の役割です。検品は製品の品質を確認するだけでなく、サプライチェーン全体の透明性を高め、環境負荷や労働問題を可視化する重要な機会となります。

課題1: サプライチェーンの「人権・労働問題」

ファストファッションの裏側には、低賃金・長時間労働という深刻な構造的問題が存在します。2013年にバングラデシュで発生した「ラナ・プラザ」の崩落事故は、縫製工場が入居していたビルが崩壊し、1,100人を超える犠牲者を出す大惨事となりました。

  • 検品による解決策

工場を訪問して検品を行う際、作業環境の安全性、適切な休憩時間の確保、児童労働の有無などを同時に確認することで、人権問題の早期発見につながります。監査レポートや第三者認証を活用しながら、サプライチェーン全体の透明性を高めることが求められています。

参考:ジェトロ 縫製工場「ラナプラザ」崩落事故から10年

課題2: 品質基準のバラつきが引き起こす「再生産と廃棄ロス」

検品基準が曖昧だったり、サプライヤー間で品質基準にバラつきがあったりすると、納品後に不良が発覚し、再生産や手直しが必要になります。この過程で、資源やエネルギーが無駄に消費され、廃棄物も増加します。

  • 検品による解決策

徹底した検品体制により不良品を初期段階で発見し、原因を分析してサプライヤーにフィードバックすることで、品質の安定化が図れます。生地の検反を徹底することで、裁断前に欠陥を発見し、無駄な廃棄を防ぐことも可能です。

SDGs達成に向けた「検品・品質管理」が果たす3つの貢献

検品・品質管理は、SDGs達成に向けて以下の3つの重要な貢献を果たします。

  1. 働きがいと経済成長:労働環境の是正と安全な職場の確保
    検品の際に労働環境をチェックすることで、安全性や衛生面の問題を早期に発見できます。
  2. つくる責任、つかう責任:廃棄ロスの削減と資源効率の改善
    徹底した検品体制により、不良品の発生を抑え、再生産や手直しを減らせます。
  3. 気候変動対策:再生産の削減による二酸化炭素排出量の抑制
    SDGsへの取り組みは、大企業でなければ難しいという誤解が根強く残っています。しかし、実際には中小企業でも実践可能な施策が多く存在します。重要なのは、できることから少しずつ始めることです。再生産や手直しが減ることで、製造工程で発生するCO2排出量を削減できます。

中小企業でもできる!SDGsにつながる具体的な検品・業務改善策

SDGsへの取り組みは、大企業でなければ難しいという誤解が根強く残っています。しかし、実際には中小企業でも実践可能な施策が多く存在します。重要なのは、できることから少しずつ始めることです。
H3.SDGs視点で始める「エシカル検品」の具体的なチェック項目
従来の検品では、製品の品質を確認することが中心でした。しかし、SDGsの観点からは、「製造工程」もチェックリストに加えることが求められます。

具体的なチェック項目

  • 適切な休憩時間が確保されているか
  • 工場の照明や換気は十分か
  • 作業スペースは安全で、事故のリスクが低いか
  • 児童労働の有無(雇用書類のチェック)
  • 労働者が適正な賃金を受け取っているか

こうしたチェックは、工場を訪問する際に目視で確認できる項目も多く、特別な設備投資は不要です。

コストを抑えて品質を担保する「効率的な検品体制」の構築手順

すべての製品を全数検品することは、時間とコストの面で現実的ではありません。効率的な検品体制を構築するためには、リスクに応じた「抜き取り検品」への切り替えが有効です。

構築手順

  • 信頼性の高いサプライヤーは抽出率を低く設定
  • 新規サプライヤーや過去に不良が多かったサプライヤーは抽出率を高く設定
  • 不良品発生時は原因を分析し、サプライヤーと共有
  • 定期的なミーティングで品質基準の見直しや改善提案を実施
  • 初期段階での「生地検反」を徹底し、裁断前に欠陥を発見

業務改善の基本「5S」をSDGs(環境・安全)に繋げるアパレル現場事例

5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、製造業における業務改善の基本です。この5Sをアパレル現場に適用することで、SDGsにも貢献できます。

  • 整理・整頓:不要在庫・サンプル品の削減で廃棄ロス対策
  • 清潔・清掃:作業環境の改善で労働安全の向上
  • しつけ:ルール徹底による不良品の減少と意識改革

トレーサビリティ(追跡可能性)を確保するサプライチェーン管理

トレーサビリティとは、製品が「どこで」「誰によって」「どのように」作られたかを把握する仕組みです。これにより、顧客への信頼性が向上し、問題発生時の迅速な原因特定が可能になります。また、グリーンウォッシュを防ぎ、真のサステナブルな取り組みを証明できます。

中小企業であっても、サプライヤーとの契約書に追跡可能性の確保を明記し、定期的な監査を実施することで、基本的なトレーサビリティを構築できます。

アパレル企業の取り組み事例と消費者ができること

多くのアパレル企業が、SDGsの達成に向けてさまざまな取り組みを進めています。また、消費者側の購買行動も、ファッション業界の在り方を大きく左右します。

環境負荷の少ないサステナブルな素材を開発・採用する

衣服の環境負荷を左右する大きな要因の一つが、使用される素材です。オーガニックコットンは農薬を使用せずに栽培されるため、土壌汚染や水質汚染のリスクが低減されます。リサイクルポリエステルは、使用済みのペットボトルや廃棄衣類から再生されるため、新たな石油資源の消費を抑えられます。

例えばユニクロでは、回収したペットボトルを原料とするリサイクルポリエステル製品を展開し、2030年度までに使用素材の約50%をリサイクル素材に切り替える目標を掲げています。また、米国のBolt Threads社が開発した「Mylo™」は、菌糸体から作られる革で、わずか2週間で栽培可能です。


参考:ユニクロ リサイクル素材Bolt Threads Mylo™

不要になった衣類を回収しリサイクルやリユースを推進する

大量廃棄問題を解決するため、多くの企業が店頭での衣類回収プログラムを実施しています。例えばユニクロの「RE.UNIQLO」プロジェクトでは、全商品のリユース・リサイクルを目指しています。特に「ダウンリサイクル」では、世界中で回収したダウン製品から羽毛を取り出し、新たなダウンジャケットに再生することで、生産過程のCO2排出量を約20%削減しています。

H&Mでは「リユース&リサイクル」プログラムを展開し、ブランドを問わず衣類を回収しています。回収した衣類は、状態の良いものは古着として再販売され、それ以外はリサイクル素材として再利用されます。


参考:ユニクロ RE.UNIQLOH&M 古着回収サービス&リサイクル

生産者の権利を守るフェアトレード認証製品を取り扱う

サプライチェーンにおける人権問題への対策として、フェアトレード認証製品の取り扱いを増やすアパレルブランドが増加しています。フェアトレードとは、発展途上国の生産者に適正な賃金を支払い、安全な労働環境を提供する公正な貿易の仕組みです。

無印良品では、オーガニックコットンの採用に加え、強制労働や児童労働の禁止を明確に掲げています。同社は原材料の生産地を訪問し、栽培・採取状況や生産者の暮らしを確認しながら、人と自然に配慮した調達を実践しています。


参考:無印良品 オーガニックコットンについて

必要な分だけ生産する受注販売モデルへ移行する

大量廃棄の根本的な原因である見込み生産モデルからの脱却を目指す動きとして、受注販売(メイド・トゥ・オーダー)への移行があります。このモデルでは、顧客からの注文を受けてから生産を開始するため、過剰在庫や売れ残りのリスクを大幅に削減できます。

受注販売には納期が長くなるというデメリットもありますが、一部の企業では3Dデザインツールやバーチャルサンプルを活用し、製造前に顧客が仕上がりをイメージできる仕組みを導入しています。

消費者が実践できる「サステナブルファッション」

信頼できるブランドの見極め方

  • 素材:オーガニックコットン、リサイクルポリエステルなど環境配慮型素材の使用
  • 生産背景:どこで、誰によって作られたかの明示
  • 認証:GOTS、FSC®、フェアトレード認証などの有無

服を長持ちさせるケアと賢い手放し方

  • 洗濯表示を守り、適切な方法で洗う
  • 着なくなった服は、ブランドや自治体の回収プログラムを活用
  • フリマアプリや古着屋でリユースを促進

SDGsを営業戦略に活かすブランド価値向上法

SDGsへの取り組みを「コスト増」と捉える企業は少なくありません。しかし、視点を変えれば、SDGsは「競合との差別化」を図り、新たなビジネスチャンスを生み出す絶好の機会です。

SDGsへの取り組みを「ブランドの付加価値」として訴求する

環境や労働者に配慮した製品は、その背景にあるストーリーが付加価値となり、価格以上の魅力を顧客に提供します。サステナブル素材を使用した新ラインや、リサイクル製品を展開することで、ブランドの姿勢を具体的に示せます。

トレーサビリティを活用し、製品がどこで誰によって作られたかを明示することで、透明性の高いブランドイメージを築けます。

営業現場での具体的なSDGsストーリーテリング

営業現場では、抽象的な理念よりも具体的な数値データやストーリーが顧客に響きます。

「廃棄物を前年比20%削減」「CO2排出量を15%削減」「検品体制の強化により不良品発生率を5%から2%に改善」といった具体的な数値を示すことで、取り組みの成果が明確になります。顧客は、曖昧な表現よりも数値で示された実績に信頼を寄せます。

環境への配慮だけでなく、「未来の子どもたちに美しい地球を残したい」「生産者の笑顔を守りたい」といった情緒的なメッセージも効果的です。人の心を動かすストーリーは、顧客の共感を呼び、購買意欲を高めるでしょう。

顧客の業界や抱える課題に応じて、関連性の高いSDGs目標を選んで訴求することが重要です。たとえば、飲食業界の顧客には廃棄物削減の取り組みを、製造業の顧客にはCO2削減の取り組みを強調するなど、相手に響くポイントを的確に伝えましょう。

管理職が経営層に提案すべきSDGs推進のロードマップ

SDGsへの取り組みを社内で推進するためには、経営層の理解と支援が不可欠です。管理職が経営層に提案する際には、費用対効果を明確に示し、具体的なロードマップとKPI(重要業績評価指標)を提示することが求められます。

SDGsへの投資がどのようなリターンをもたらすかを示しましょう。たとえば、廃棄コストの削減、検品体制の強化による不良品削減、新規顧客獲得率の向上などが挙げられます。初期投資が必要な場合でも、中長期的な視点でのコスト削減効果を示すことで、経営層の納得を得やすくなります。

短期目標としては、検品体制の見直しやサプライヤー管理の改善など、比較的低コストで実施できる施策を設定します。長期目標としては、サステナブル素材への全面切り替えや、受注販売モデルへの移行など、ビジネスモデルの変革を視野に入れた計画を立てます。

SDGs推進には、担当部署だけでなく、全社的な協力が必要です。営業、生産、物流、広報など、各部門を巻き込んだプロジェクトチームを編成し、横断的に取り組む体制を整えましょう。

まとめ

アパレル業界におけるSDGsへの取り組みは、環境保全や社会問題の解決に貢献するだけでなく、ブランド価値の向上や新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。特に「検品」は、単なる品質管理にとどまらず、労働環境の改善や廃棄物の削減、CO2排出量の抑制といった、SDGsの複数のゴールに貢献する重要なプロセスです。

中小企業であっても、エシカル検品の導入や5S活動の徹底、トレーサビリティの確保など、今日から始められる施策が数多くあります。大切なのは、できることから少しずつ取り組み、継続的に改善していく姿勢です。

消費者側も、サステナブルなブランドを選び、服を長く大切に使い、適切に手放すことで、持続可能なファッション産業の実現に貢献できます。企業と消費者が共に意識を変え、行動を変えることで、未来のファッション業界はより良いものになるでしょう。

株式会社ハクホウは、アパレル製品の検品・補修・再生・物流・保管において、長年の実績と専門知識を持つ企業です。SDGsへの取り組みを強化したいとお考えの際には、ぜひ私たちにご相談ください。お客様の課題に寄り添い、持続可能なファッションビジネスの実現をサポートいたします。

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