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X線と磁気検針の違いとは?アパレル検品における金属検出方法を徹底比較

アパレル製品の品質管理において、検針作業は消費者の安全を守る重要な工程です。縫製工程で折れた針や金属片が製品に混入したまま出荷されると、消費者が怪我をするリスクがあるだけでなく、製造物責任法(PL法)に基づく損害賠償や製品回収といった深刻な事態を招きます。

検針には大きく分けて「X線検針」と「磁気検針」の2つの方法があり、それぞれ異なる特性を持っています。製品の種類や付属品の構成によって、どちらの方法を選ぶべきかは変わってきます。

本記事では、X線検針と磁気検針の基本的な違いから、製品別の選択基準、コスト面での比較、実際の異物混入事例まで詳しく解説します。自社製品に最適な検査方法を選択するための判断材料として、ぜひご活用ください。

X線と磁気検針の基本的な違い

アパレル業界で広く用いられている2つの検針方法には、根本的な原理の違いがあります。磁気検針は永久磁石を用いて磁場の変化を検知する方式で、日本国内では最も一般的な検査手法となっています。一方のX線検針は、レントゲン撮影と同様の仕組みを利用し、製品の内部を透視して異物を視覚的に確認する方法です。

両者の選択は単なるコストの問題ではなく、検出できる異物の種類や製品の特性によって決まります。たとえば、金属ボタンやファスナーが多数付いた製品では、磁気検針だと誤検出が頻発する可能性があるため、X線検針の方が適しているケースもあります。

検出原理の違い

磁気検針は永久磁石が作り出す磁場の中を製品が通過する際に、鉄系の金属が引き起こす磁場の歪みを感知する仕組みです。ベルトコンベア式の検針機では、トンネル状のセンサーの上下に磁石が配置され、製品を流すだけで自動的に検査が行われます。この方式は鉄に対して高い感度を持ち、直径0.8mmから1.2mm程度の微小な鉄球まで検出可能です。

対してX線検針では、製品にX線を照射し、透過したX線の強弱を画像化することで異物の有無を判断します。物質の密度差によって画像上に濃淡が生まれるため、形状や位置を目視で確認できるのが特徴です。画像は白黒で表示され、色を反転させる機能を備えた装置もあり、見落としのリスクを低減できます。

このように、磁気検針が「磁場の変化」という物理現象を利用するのに対し、X線検針は「透視画像」という視覚情報に基づいて判断する点が大きな違いとなります。

検出できる異物の違い

磁気検針が検出できる異物は基本的に鉄系の金属に限られます。ミシン針、マチ針、折れ針の破片、ホチキスの針、荷札の針金など、縫製工程で混入しやすい鉄製の異物を高精度で発見できます。検針機は永久磁石を採用しているため、ボタンやスナップなどの非鉄系金属には反応しにくく、針だけを選別的に検出できる設計になっています。

一方、X線検針では金属の種類を問わず検出が可能です。鉄はもちろん、アルミニウム、ステンレス、真鍮など、さまざまな金属に対応できます。さらに注目すべきは、金属以外の異物も検出できる点です。プラスチック片、ガラス破片、石、骨など、密度が周囲の素材と異なる物質であれば画像上に映し出されます。

この違いにより、磁気検針は一般的な縫製品の検査に適している一方、X線検針は複雑な装飾が施された製品や、金属以外の異物混入リスクがある製品に向いているといえます。

どちらを選ぶべき?製品別の選択基準

検針方法の選択は製品の特性によって判断する必要があります。付属品の種類、製品のサイズや形状、ターゲット顧客層などを総合的に考慮することが重要です。

一般的な基準として、シンプルな構造で金属パーツが少ない製品は磁気検針で十分対応できます。検針対応のボタンやファスナーを使用していれば、コストを抑えながら確実な検査が実現します。

反対に、金属装飾が多い製品や、磁気検針では対応できない素材を使用している場合は、X線検針の導入を検討すべきです。特に子供向け製品やベビー用品では、万が一の事故を防ぐために、より高精度な検査体制が求められます。

一般衣料品の場合

Tシャツ、パンツ、ブラウス、スカートといった一般的な衣料品では、磁気検針が主流となっています。これらの製品は金属パーツが少なく、使用されているファスナーやボタンも検針対応品が選ばれることが多いためです。

コンベア式の検針機を使用すれば、袋詰めされた状態のまま連続的に検査ができ、作業効率が高まります。ベルトスピードは40m/分程度の機種が多く、大量生産された製品を短時間で処理できるメリットがあります。

ただし、金属ボタンやファスナーのサイズが大きい場合や、数が多い場合は誤検出が起こる可能性があります。その際は感度調整を行うか、必要に応じてX線検針と併用する方法も検討できます。

子供服・ベビー用品の場合

子供服やベビー用品では、安全性への配慮から、X線検針の採用が増えています。乳幼児は異物を口に入れてしまうリスクが高く、金属だけでなくプラスチック製のスナップやボタンの破片も危険な異物となり得ます。

X線検針であれば、プラスチック片やその他の非金属異物も検出できるため、より包括的な安全確認が可能です。特に、飾りボタンや装飾パーツが多い子供服では、磁気検針だと誤検出が頻発し、検査効率が著しく低下する場合があります。

消費者の安全意識が高まる中、子供向け製品を扱う企業にとって、X線検針の導入は品質保証体制の強化につながり、ブランドの信頼性向上にも寄与します。

高級ブランド品の場合

高級ブランドの製品では、デザイン性を重視した金属装飾が多用される傾向にあります。真鍮製のバックル、非鉄系金属のチェーン、装飾用のリベットなど、磁気検針では検出しにくい素材が使われることも少なくありません。

このような製品に対しては、X線検針が有効な選択肢となります。レザーバッグ、靴、アクセサリーなど、構造が複雑で磁気検針機のコンベアを通しにくい製品も、X線検針なら形状を問わず検査できます。

また、高級ブランドでは製品一つひとつの価値が高いため、万が一の異物混入が発生した際のブランドイメージへのダメージは計り知れません。X線検針による確実な品質保証は、ブランド価値を守るための投資として位置づけられます。

コストと効果で比較する導入判断

検針設備の導入を検討する際、初期投資額だけでなく、ランニングコスト、検査速度、メンテナンス費用なども含めた総合的な判断が必要です。

磁気検針は比較的低コストで導入でき、日常的な運用も容易です。しかし、X線検針は初期費用が高額になる一方、多機能性と高精度を実現できます。自社の製品ラインナップや検査量、品質基準を考慮し、費用対効果を見極めることが重要です。

導入コストの違い

検針設備の導入費用は、機種のタイプや機能によって大きく異なります。磁気検針機は比較的低価格から導入できる選択肢が多く、小規模事業者でも手が届きやすい価格帯となっています。一方、X線検針機は高度な技術を用いているため、初期投資額は高めですが、その分多機能性に優れています。

以下の表は、各検針機のタイプ別価格相場をまとめたものです。

検針方式機器タイプ価格帯特徴
磁気検針ハンディタイプ1万円~10万円小型で取り扱いやすい。小規模生産に適している
磁気検針卓上タイプ10万円~50万円限られたスペースで使用可能。小〜中規模生産向け
磁気検針コンベア式100万円~500万円大量生産ラインに組み込み可能。高速処理が強み
X線検針コンベア式100万円~500万円金属以外の異物も検出。多目的利用が可能
X線検針高性能モデル1,000万円以上最高精度の検査。大型製品や複雑な検査に対応

単純な導入コストだけを見れば磁気検針の方が有利に思えますが、X線検針には金属以外の異物検出、形状検査、個数検査など多目的に活用できる利点があります。検査対象製品の種類が多い企業や、将来的な事業拡大を見据えている場合は、X線検針の多機能性が長期的なコスト削減につながる可能性もあります。

また、外部の検品代行業者に委託する選択肢もあります。検針作業を外注する場合の費用相場は、一般的な衣料品で1点あたり7円から20円程度です。コートやジャケットなど形状が複雑な製品は、これより高くなる傾向があります。自社で設備投資するか、外部委託するかの判断も、総合的なコスト効率を考慮して決定すべきでしょう。

検査速度と生産性

磁気検針の大きな利点は検査速度の速さです。コンベア式検針機では、ベルトに製品を次々と載せるだけで自動検査が行われ、異常がなければそのまま梱包工程に進めます。処理スピードは40m/分程度が標準的で、大量生産品の検査に適しています。

X線検針は目視確認が必要なため、磁気検針と比較すると検査に時間がかかります。製品がX線装置を通過した後、オペレーターが画像を確認し、異物の有無を判断する工程が加わるためです。特に折れ針の先端のような微小な異物を見つけるには、熟練した作業者による慎重なチェックが求められます。

ただし、X線検針機の中には自動警報機能を備えたモデルもあり、異常を検知すると即座に通知される仕組みになっています。また、検査画像を記録できるため、トレーサビリティの確保やクレーム発生時の原因調査にも活用できます。

検査で見つかる異物の実例と対応

実際の検針作業では、どのような異物が発見されているのでしょうか。過去の事例を知ることで、検針の重要性をより深く理解できます。

よくある異物混入例

縫製工程で最も混入しやすいのは、ミシン針や折れ針の破片です。大量生産の現場では、作業中に針が折れることは避けられず、その破片が生地の縫い代や裏地に挟まってしまうケースがあります。縫製工場では針の管理を徹底していますが、それでも完全にゼロにすることは困難です。

マチ針や安全ピンの取り忘れも頻繁に発生する問題です。仮止めに使用したマチ針を抜き忘れたまま縫製を進めてしまい、完成品に残留するケースが報告されています。特に複雑な構造の製品では、見落としやすい箇所が多くなります。

その他にも、ホチキスの針、荷札の針金、工具の金属片、検品用クリップなど、製造や検査の各工程で使用される金属類が異物として混入する可能性があります。X線検針では、プラスチックボタンの破片、ファスナーの部品、縫い糸に付着した小石なども検出された例があります。

見つからなかった場合のリスク

異物混入が見逃されて製品が市場に出てしまうと、企業は深刻な事態に直面します。消費者が針で怪我をした場合、製造物責任法に基づき、製造者は損害賠償責任を負います。怪我の程度によっては賠償額が高額になり、企業経営に大きな影響を与えかねません。

さらに重大なのは、小さな子どもが異物を誤飲してしまうリスクです。針や金属片を飲み込んだ場合、内臓を傷つける可能性があり、緊急手術が必要になる事態も想定されます。このような事故が発生すれば、企業の社会的責任が厳しく問われることになります。

出荷済み製品から異物が発見された場合、同一ロットの製品すべてを回収する必要が生じます。回収費用、告知費用、クレーム対応の人件費を合計すると、一度の事故で数千万円のコストが発生するといわれています。また、SNSなどで情報が拡散されれば、ブランドイメージの低下は避けられず、売上にも深刻な影響が及びます。

このような事態を防ぐためにも、適切な検針方法を選択し、確実な品質管理体制を構築することが不可欠です。

製品に最適な検査方法を提案するハクホウの実績

本記事ではX線検針と磁気検針、それぞれの特性と選択基準について解説してきました。両者には明確な違いがあり、製品の特性に応じた使い分けが品質管理の鍵となります。

磁気検針は一般衣料品の検査に適しており、低コストで高速処理が可能です。一方、X線検針は金属以外の異物も検出でき、複雑な装飾品や子供服などの検査に威力を発揮します。どちらか一方が優れているのではなく、製品リスクと費用対効果のバランスを考えた選択が重要です。

「子供服でプラスチック部品の混入が心配」「高級品で非磁性金属も検出したい」など、製品特性に応じた最適な検査方法の選択が重要です。

ハクホウでは創業80年の実績で培った豊富な事例をもとに、X線・磁気検針の両設備を駆使し、お客様の製品リスクに最適な検査プランをご提案します。

【選ばれる理由】

  • 両検査方法の豊富な実績と事例
  • 製品リスクに応じた最適提案
  • 迅速対応で出荷遅延なし

金属検出でお悩みでしたら、まずはお気軽にご相談ください。製品サンプルでの検査テストも承ります。

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